都城簡易裁判所 昭和49年(い)甲205号 決定 1974年9月02日
被告人 池田末盛
昭二四・七・一四生 無職
主文
本件につき当裁判所がなした昭和四九年五月一五日付略式命令はこれを取消す。
本件公訴を棄却する。
理由
本件については都城区検察庁検察官から当裁判所に対し昭和四九年四月三〇日付公訴が提起され略式命令の請求があり同年五月一五日略式命令がなされたものであるが、起訴状記載の住居地の被告人に対し右謄本の送達をしたところ送達不能の理由で返戻されたので検察官にその旨通知したところ被告人は本決定表記の藤元早鈴病院に精神分裂症にて入院中であるとの通知を受けたが当裁判所としては被告人が現在の病状について、その程度はどうか、場合によつては略式命令の内容を了知し、理解が可能なるか又不服ないし正式裁判申立の是非の有無の意思決定が可能か等即ち意思能力の程度につき知る要があつたので昭和四九年六月八日と有効期間である四ヶ月の満了直前の同年八月二三日の二回にわたり同病院長に照会したところ被告人の現在の症状は略式命令の内容を理解し、かつ不服の判断ないし不服ある場合の正式裁判申立をする能力がない、この病状も今後(八月二三日を起点として)三ヶ月ないし六ヶ月間の入院加療にて良好となる予想であるとの回答に接したのである。すると現在までは即ち無能力者と認められしたがつて受送達能力がなくかりに送達されたとしてもその効力は無効である。しかして右略式命令を被告人が送達を受けるべき法定の四ヶ月内である昭和四九年八月二九日までに無能力者状態を脱却して有効に告知されることができなかつたのであるから刑事訴訟法第四六三条の二に則り主文のとおり決定する。